日府展に水墨画部および写真部を新設

 日府展(一般社団法人日本画府、理事長南部祥雲)は、平成28年5月開催の第63回日府展から、水墨画部および写真部を新設します。

 墨色の濃淡、にじみ、かすれなどを表現の要素とした水墨画は、鎌倉時代に禅と共に中国から伝わり、雪舟、狩野派、淋派、等伯など、水と墨による表現を追求した多 くの作家や、その画に親しみ、その美を愛した多くの人々により、現代へと繋がれてきました。
 しかし、いま筆と墨とは身近なものではなくなり、美術大学に水墨画の学科はなく、総合の美術展も水墨画を単独の部門とするものはありません。
 関西に拠点を置く日本水墨画美術協会(理事長山田大作)は、そのような状況を打開し、水墨画を美術の独立確固とした分野として樹立すべく、積極的な表現活動を行 ってきました。その活動をより確かなものとするため、山田理事長をはじめとする同協会の主要メンバーが、来年の第63日府展に出品することになりました。一般出品 者も含め、20名ないし30名の出品が予想されます。
 受け入れる日府展は、川端龍子に師事し青龍社展で活躍していた児玉三鈴が、昭和31年、石田粧春ら同志と相寄り公募団体日本画府を結成、展覧会名を日府展として 第1回展を開催したことに始まります。その後昭和36年、日本美術院彫塑部解散に伴い、矢崎虎夫ら同部有志を併合して彫塑部を併設、昭和38年には洋画部、工芸部 を新設して総合展に改組しました。
 龍子も三鈴も水墨画を良くし、多くの傑作を残しています。その流れを汲み、日府展にはこれまでも、日本画部の中に数は多くないものの水墨画が出品されてきました。 今回、纏まった点数の出品が予定されていること、また日本水墨画美術協会の「水と墨のみ」とし、彩色不用に拘る姿勢を尊重する意味から、63回展から水墨画部を日 本画部から独立した部として迎え入れる判断をしました。水墨画の単独部門は、全国レベルの公募の総合展としては初めてとなり、大いに期待されます。

水墨画部と同時に写真部も新設することになりました。
 近年、画材や情報処理技術の進歩に伴い、芸術表現も多様化し、美術の世界でも新しい表現方法が生まれ、また境界が曖昧になりつつもあります。写真の分野では、デ ジカメがあっという間に銀塩フィルム写真に取って代わり、それ以前からあったオートフォーカス、自動露出などの技術と相まって、初心者でも高いレベルの写真が撮れ るようになりました。
 一方、サッカーや鉄道ファンなどの例を引くまでもなく、これまで主に男性の分野とされていたスポーツや趣味の世界への女性の進出はめざましいものがあります。こ のことは写真の世界も例外ではありません。有名な観光地や撮影スポットでも、女性カメラマンの姿が多く見られるようになりました。操作が容易になったカメラと、女 性特有の視点が出会って、新しい写真表現が生まれて来つつあるようにも思われます。

 日府展に写真部を新設するにあたっては、創立時からの「権威や理論に囚われることなく、自由かつ明朗な芸術を創作する」という理念に基づき、分野や技法に拘らず、 写真を通じて芸術表現をしようと励んでいる人達に、新しい発表の場を提供しようとするものです。
団体展の衰退が叫ばれて久しい今日ですが、水墨画部および写真部の新設を起爆剤とし、日府展は6部門を擁する総合美術展として、新しい繁栄の時代を切り開いてい く所存です。
平成27年11月


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